Bandit Magazine

踏み慣らされた正道を歩まず、荒野を突き進む荒くれ者たちのメディア『BANDIT』です。…

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踏み慣らされた正道を歩まず、荒野を突き進む荒くれ者たちのメディア『BANDIT』です。 主にnote・紙雑誌でカルチャー×批評についてお届けしていきます。 詳細は当団体のWEBサイトにて! https://bandit-den.com/

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  • 世界文学の現在へ

    世界にはまだ見ぬ面白い小説、日本では知られていないけれどとんでもない作家が数多くいます。日本ではあまり紹介されてこなかった作家のまだ翻訳されていない作品を中心に取り上げ、世界の文学でいまなにが起きているかをお伝えします。

  • FANZAピンク映画ch案内所

    かつては、アダルトメディアの一角として、また新人映画監督の登竜門として数々の作家性溢れる名作を生んだピンク映画。いま、成人映画館のほとんどがなくなり、名作に触れる場も少なくなりましたが、DMMが運営するFANZAの有料プランに入ると知られざる傑作に出会うことが出来ます。 このマガジンの記事ではピンク映画に詳しいtanosiikagakuが水先案内人となって、(非公式に)FANZAで手軽に見られるピンク映画の魅力を伝えます。

最近の記事

停滞と偶然ーーポール・オースターの遺作『Baumgartner』

 まずは個人的な話とお詫びから。この4月に東京からロンドンへと移ることになり、それが決まってからというもの、身辺の整理や職場の引継ぎ、家族や友人たちとの別れなどで、この春は全てが瞬く間に過ぎ去った。こちらへ着いてからは次々に起こる新たな経験をよくよく咀嚼するまもなく、気がつけば2ヶ月が経とうとしている。こうしたこともあり、2ヶ月に一度の約束の連載を1回分休ませてもらうことになってしまった。  こうした状況だったため、ポール・オースターの死を伝えるニュースを、少し遅れて知るこ

¥300〜
    • 無意味な笑いを解き明かす意味ーー『BANDIT Vol.3』のためのイントロダクション

      5/19(日)『BANDIT Vol.3』を発行する。今回の特集は「ハガキ職人と笑い」。 今回は、その導入となるテキストをお届けする。 『BANDIT Vol.3』をお届けする。今号の特集は「ハガキ職人と笑い」である。  中学から高校時代まで毎晩のように『オールナイトニッポン』や『JUNK』を聞いていた。朝方まで起きる癖がついてしまったせいで完全な夜型人間になってしまったし、午前中の授業をきちんと聞いた記憶もほとんどない。 とにかく笑っていたかった。悠久とも思えるような

      • 人と交じり合う獣たち――顔歌の『Strange Beasts of China』

        『Strange Beasts of China』(「中国の奇妙な獣たち」【原題:「异兽志」】)はあわせて9つの章で構成された奇譚集だ。それぞれの章で異なる「獣」をめぐるエピソードが描かれる。例えば1章に登場するのは「悲しみの獣」。語り手は彼らについて次のように描写する。  獣たちが住むのはヨンガン(永安)と呼ばれる中国南部にある架空の街。彼らは街を流れる川のほとりにある団地に暮らし、ほとんど人間と同じような相貌で、人間と同様の生活をしている。  獣たちについて記す語り手

        ¥300〜
        • 『BANDIT vol.3』原稿募集のお知らせ

          『BANDIT vol.3』では特集テーマに合わせた論考やエッセイ、創作を発表したい人を募集します。 今回の特集テーマは「ハガキ職人」。この特集テーマの企画意図はこちらの記事から確認できます。 ハガキ職人について特集するからには、弊誌も特集に関する原稿を広く募りたいと思い、今号では投稿を募ることにしました。 エントリーは2/14まで、原稿の投稿は3/15まで可能です。 詳しい応募の流れや規約はリンク先にあります。 ハガキ職人に関わる内容で12,000字以内であれば字

        停滞と偶然ーーポール・オースターの遺作『Baumgartner』

        ¥300〜

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        • 世界文学の現在へ
          6本
          ¥500
        • FANZAピンク映画ch案内所
          4本
          ¥500

        記事

          『BANDIT vol.3』予告

          『BANDIT vol.3』ではハガキ職人について特集する。 なぜいまハガキ職人か? 折しも公開される”伝説のハガキ職人”をテーマにした映画『笑いのカイブツ』には以下のようなコピーがつけられている 「何者かになりたい」というフレーズは現代人の自己認識のありようを象徴する言葉の一つだ。お笑いブームが加熱する昨今、例えばM-1の舞台裏を映したドキュメンタリーを見れば、芸人たちが「売れる」ことに情熱を賭け、「何者かになる」ために「笑い」の世界へと身を投じていることが分かるだろ

          『BANDIT vol.3』予告

          早わかり加速主義: ポスト・インターネット状況下の小説(春海水亭、佐織えり、quiet)

          1. 加速主義とは何か。様々な説明ができるが、ここでは次のような一節の参照から始めたい。ある座談の中での、仲山ひふみの発言である。 付言する。差し当たり、1990年代イギリスで加速主義は興った、と言える。同時代のイギリスのクラブカルチャーと密接な思潮で、現代アートにも影響を及ぼしたものだ。ただし「加速主義」という呼称が広まるのは2010年代に入り、過去の一連の流れが回顧されてからのことだった。ロンドンのゴールドスミス大学で加速主義に関するシンポジウムが開かれるのが2010年

          早わかり加速主義: ポスト・インターネット状況下の小説(春海水亭、佐織えり、quiet)

          SNSを予見する「散漫さ」――Evan Daraの『The Lost Scrapbook』

           例えば、スマートホンでSNSの投稿を次から次へとスクロールしている時のことを想像してみて欲しい。それぞれには関連がないエピソードの数々が、あなたの指によって画面の上へ上へと送られていく。 ペットに関する他愛のない投稿の直後に、誰かを告発する不穏な内容の投稿が続く。ある投稿に貼られたリンクをクリックすれば、別の記事が現れる。 多くの場合、あなたは集中して画面を追っているわけではない。散漫な、意識と無意識の間のような状態でそれらを眺めている。人差し指が絶え間なくスクロールを続け

          ¥300〜

          SNSを予見する「散漫さ」――Evan Daraの『The Lost Scrapbook』

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          瀬々敬久 ピンク映画界の異端にしてトップランナー!

           皆さんお元気ですか? 派遣労働先の契約も終了間近。全く適正からは程遠いこの仕事ともついにオサラバかとホッとしているtanosiikagakuです。 真面目に働いているのでそれなりにお金は貯まりましたが、淋しいからヤフオクやメルカリでヴィンテージもののエロ本をポチってしまう病は治ってくれません。こんな社会不適応者にこそピンク映画の「汚れと気安さ」はひらかれているのだと思います。 今回はまだ私がピンク映画鑑賞初心者だった20代前半に出会って鳥肌が立った瀬々敬久監督『汚れた女(マ

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          瀬々敬久 ピンク映画界の異端にしてトップランナー!

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          ヤマアラシの語り方でーーアラン・マバンクの『Memoirs of a Porcupine』

          人間がみな、動物の「ダブル(分身)」を持つというアフリカの村。  42歳となったヤマアラシが、村で最も古いバオバブの木を前に、自分の「ダブル」だった人間の男について思いを巡らしている。なぜ彼が死ななければいけなかったのか、自らとその男の運命について、動物は語り始める。  人の心を持ったヤマアラシの語りは、英訳版で160ページ余り続いていくが、ピリオドは一度も使われない。ヤマアラシの言葉は、書き言葉としてではなく、あくまで語られる言葉として、淡々と、止めどなく続いていく。

          ヤマアラシの語り方でーーアラン・マバンクの『Memoirs of a Porcupine』

          負け犬の側の世界の映画 いまおかしんじインタビュー(後編)

          当時の彼女に「取り返しのつかないことってあるよ」と言われてtanosiikagaku(以下 t) 初期集大成的な『デメキング』のあと、1999年公開の『愛欲みだれ妻』では作風もポジティヴなものに変わっていくと思うんですが、一方でVシネマに目を向けると、例えば『人妻女教師 熟れた放課後』という作品ではいまおかさんの中でまだ世紀末が続いている感じがしたんです。 t 当時は今よりも厳然と劇場用映画とVシネマで制作体制が分かれていたかもしれないのですが取り組み方に違いはあったんで

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          負け犬の側の世界の映画 いまおかしんじインタビュー(後編)

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          勘違いでもいいから生きるための目的を見つけた方がいい いまおかしんじインタビュー(前編)

          10月21日に最新作『道で拾った女』が公開されるいまおかしんじ監督は、脱力的で時に狂人的ですらあるユーモアセンスと、繊細な人間描写を共存させる唯一無二の鬼才。女優・林由美香の代表作『たまもの』やその年のピンク大賞で作品賞・監督賞を獲得した『かえるのうた』、ウォン・カーウァイ作品で名高いクリストファー・ドイルを撮影監督に迎えた日独合作のピンクミュージカル『UNDERWATER LOVE -おんなの河童-』といったポップな作品群はいまなお「ピンク映画」というジャンルを超えた不滅の

          ¥300〜

          勘違いでもいいから生きるための目的を見つけた方がいい いまおかしんじインタビュー(前編)

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          言葉が「崩れる」瞬間ーーベン・ラーナー『Topeka School』

           1997年。カンザス州の州都トピカの高校生アダム・ゴードンは、ディベート競技のエースで、全国大会で上位に入るほどの実力を持つ。当時この高校だけでなく、全米各地で多くのディベーターが選ぶ戦略として「極めて速いスピードで話し続ける」というものがあった。SpeedとReadを合わせ「Spreading」と呼ばれるこの戦略は、一度聴いただけではわからないような多くの情報を、息もつかないほどの速さで話すことで、対戦相手が答えに窮し、減点させることを狙うものだという。  これを「対話

          言葉が「崩れる」瞬間ーーベン・ラーナー『Topeka School』

          ソウルを歩き回る幽霊たち――ぺ・スア『Untold Night and Day』

           欧米を中心に高く評価されたぺ・スア(Bae Suah、裵琇亞)の2013年の作品『알려지지 않은 밤과 하루』――英訳では『Untold Night and Day』――を、乱暴に要約すれば、28歳の元女優の【アヤミ】が、消えた知人を探して真夏のソウルを歩き回る物語、ということになるだろう。タイトルの通り「1日と1晩」のできごとを描いている。アヤミが回遊するソウルは、別の街に幾度となく姿を変える。ある種の平行世界――アヤミがアヤミでなかった世界――「こうであったかもしれない

          ソウルを歩き回る幽霊たち――ぺ・スア『Untold Night and Day』

          紗貴めぐみ 日本屈指のピンク≒パンク映画女優

           皆さんお元気ですか。 東京の名画座で長らく働いたけど、コロナ下で失業して失意のどん底で一ミクロも愛情のない生まれ故郷の長野県で愛猫のナナちゃんだけを心の頼りにして生きている、物淋しい田舎者チンピラシネフィルのtanosiikagakuです。 突然ですが今回から毎月、私のリスペクトするピンク映画女優やその作品を紹介していきたいと思います。FANZAで観られる名作を紹介する題して「FANZAピンク映画ch案内所」! ピンク映画の魅力  60年代半ばに誕生し、80年代のアダル

          紗貴めぐみ 日本屈指のピンク≒パンク映画女優

          書棚の間で自己について考える――『BANDIT vol.2』のためのイントロダクション

          11/20(日)『BANDIT vol.2』を発行する。今回の特集は「自己啓発大解剖」 今回は、その導入となるテキストをお届けする。 私がよく行く本屋はビルの二階分を占めていて、一階には雑誌や文芸書が、二階には実用書やビジネス書が並べられている。大体は一階しか見ないが、時々は二階にも足を運んでどんな本があるのか見ることもある。二階には自己啓発書や専門書があり、それらの棚をざっと確認する。 ITエンジニアとして働く私は日々チームビルディングに勤しんでいる。チームメンバーの

          書棚の間で自己について考える――『BANDIT vol.2』のためのイントロダクション

          『BANDIT vol.2』告知

          現在、BANDIT編集部では11月20日に開催の文学フリマ東京に向けて、雑誌『BANDIT』を鋭意制作中です。 『BANDIT vol.2』の特集は自己啓発についてです! 不況と言われる出版業界の中でも堅調に売上を上げる自己啓発書。『嫌われる勇気』やカツマーブーム、そして『人生がときめく片付けの魔法』の近藤麻理恵さんなど人々の記憶に残るベストセラー・インフルエンサーを近年も輩出する一大ジャンルとなっています。 この特集を始めるにあたり下調べしていて面白いと感じたのは自己

          『BANDIT vol.2』告知